私を見つけた唯人君は、しゃがみ込んで、目線を私に合わせた。
「どうした?」
「っ……わか…な…い」
「そうか…」
唯人君は眉を下げて、困ったように微笑むと、優しく私を抱きしめてくれた。
「……唯人君…私……」
「ん?」
「…私……思い出した…」
「………」
「あの男の子の名前…」
私は、唯人君の胸に顔を押し付けて目を瞑った。
「藤島雅人。雅人君ってゆうの……」
私が、彼の名前を呟いたとき、唯人君の私を包む腕が微かに、ピクリと動いた気がした。
「……彼から、留守電が入ってたの。彼、今日本にはいないらしいんだけど、来週日本に帰って来るんだって。」
「そう……」
「……うん…私…嬉しいはずなのに…悲しい涙が出るの…」
「どうして?」
「…それが、わかんなんないの…。ただ、悲しくて…」
「……」
「唯人君?」
私は、何も言わないで黙っている唯人君を見上げた。