保健室には先生はいなかった。
「先生、いないな。とりあえず、これ着てて」
唯人君は自分が腰に巻いていた長袖の体育着を私に渡した。
「ありが…とう…」
私はその体育着を顔につけて涙を拭いた。
顔をつけると、ふわっと唯人君の香りがした。
「…唯人君の…匂いがする……」
「俺の体育着だからね。泣き止んだ?」
「うん…。ごめんね…」
私が謝ると、唯人君は私が顔につけている体育着を取って、私を見つめた。
「夜深…?妬いた?」
クスクスと笑う唯人君。
「うん。妬いた。中村さんにムカついた。そしたら、シュート失敗して足ひねった…」
「ごめん。そばにいてあげられなかった。」
「ううん。平気。」
私が顔をあげて唯人君を見ると、唯人君は私のおでこにキスをした。
「…中村さんなんて、眼中にないから。夜深だけだから…」
おでこにあった唇が、私の口元に移動する。