ーー「その弟の名前も、結局、忘れちゃったけどね…」
「…その後は、どうなったの?」
「その後?」
「うん」
その後は……
ーーその後…
弟君と、私は木の下で少し話をしたんだ。
「ちょっと悪いけど…同じ顔で“ちゃん”は変だから、呼び捨てでいいよ。」
「わかった!!…で…何で…泣いてたの?」
「……君達、お引っ越しするんでしょ?」
「うん。それで、お兄ちゃんとお別れするから?」
「うん。お別れ…したくないもん。」
「夜深、わがまま。」
「……うるさい。」
「はははっ!!」
「もう…」
この兄弟は不思議で、一緒にいると、笑顔になれた。
「…夜深?今は辛いけど、またきっとどこかで会えるよ。」
「…ほ…んと?」
「うん。ほんと。」
「っ…ぅ…」
そう言われて、また泣き出した私を、弟君は優しく抱きしめてくれた。
お兄ちゃんの方とはまた違う温かさだった。