それは突然だった。




「夜深…僕、お引っ越しするんだ…」



「お引っ越し?」



「……うん…。パパの具合が悪くて、今よりもっとすごい先生に見てもらわなきゃいけないんだ…」



そう。


そのとき、彼の父親は大病を患っていた。



だから、父親のために引っ越すって言うんだ…。



「……いつ…?」




私はショックを隠しきれず、震える唇でそう聞いた。




「……明日…」




突然過ぎるよ。



突然過ぎる……




「…っ……バカ!!!」




私はギュッと唇を噛みしめて、彼に背中を向けて走り出した。



「夜深!!」




「もう知らない!!勝手にお引っ越しでも何でもすれば!!!」



「…っ夜深…」




彼が泣いているのは背中を向けていてもわかった。



でも、振り向かなかった。




私も、泣いていたから。



泣いて泣いて、走って……




あの木に



たどり着いた。