言っちゃダメ。
心の中のもう一人の私が止めた。
今は…ダメ。
「っ……言いたくないの。今は…言いたくないの…」
「……今は?」
「言えるときが来たら言うから…ごめん…ごめんね…」
「…うん……」
唯人君は泣きじゃくる私の手に優しく氷を乗せた。
そして、私の頭をぽんぽんと撫でると
何も言わずに玄関に向かった。
帰っちゃうの?
私が泣いてばかりいるから?
「……で…」
振り絞って出た声がこれだった。
「…ん?」
「っ…行かないで…」
ああ…涙が止まらない。
私、矛盾してるよ。
唯人君に会いたくないって思ったり
抱きしめて欲しいって思ったり……
なのに、「行かないで」って言って……
嫌な女。
「……夜深?」
「ごめん…私…すごく嫌な女だ…。唯人君、ごめん…ウザくて…」
どんなことを思っても、涙は止まらない。
私…どうしちゃったの……