マンションに戻ると、私の部屋の前で唯人君がうずくまっていた。
顔を伏せていて、表情が見えない。
私は唯人君にゆっくりと近づいて、その柔らかい髪の毛に触れた。
ピクッ…ーー
唯人君は微かに動いたと思ったら、勢いよく顔をあげた。
「…夜深……」
「……ごめん…」
私はとっさに謝った。
だって、唯人君が……
「……っ…夜深…」
泣いてるから…
「唯人君……」
「…夜深がいなくなると思ったら、怖かった……」
「唯人君…泣かないで……ごめんね…ごめんね…」
私は唯人君を抱きしめた。
こんな彼を見たのは二回目だ。
私…バカだ。
こんなに弱い人をひとりにして、心配かけさせて……
「ごめんね…もう、ここにいるから。私…ちゃんといるから…」
私は唯人君の肩に両手を置いて
おでこに、キスを落とした。
「春でもまだ寒いね。ここも寒いから、中入ろ?」
私は唯人君の頭を撫でながら微笑んだ。