家を飛び出したはいいものの、暗い田舎道は怖くて……
光が欲しくて、ポツンと一つぼやけて光る街灯の下で、私は泣いていた。
このとき、お父さんとお母さんとおばあちゃんと、あの男の子の家のご両親も捜してくれたらしいけど
私を見つけてくれたのは……
ーー『夜深!!』
あの男の子だった。
あのときも、鼻を桜の匂いが掠める
今と同じ季節だったな……
ーー『お家がわからなくなっちゃったの……ぅ……』
『大丈夫。夜深、泣かないで!!僕がわかるから!!』
『本当?』
『うん!!』ーー……
あのときに繋いでくれたあの子の手、温かかったな…
「ふぅ……」
私は、ゆっくりと顔をあげた。
さっきと何も変わらない風景だ。
帰らなきゃ……
こんな…逃げてちゃダメだ。
唯人君に、ちゃんと話を聞こう。
ねぇ…君だったらそう言うよね……?
私は心の中であの男の子に問いかけた。
心の中の彼は微笑んでくれたから、私は立ち上がり、マンションに向かった。