唯人君はずるい。
いつもそうやって、私の心を盗んでいく。
私が人に心を開くなんて、有り得なかったのに……
唯人君はいとも簡単に
私の心の扉を開けてしまった。
「夜深。夜深がいなかった日…何も知らなかったから、またいなくなったと思ったんだ…俺もめちゃくちゃ寂しかった。」
「私もだよ。でも私……」
私は……
「私はここにいるよ。唯人君の目の前にいるよ。」
私は唯人君の手を取って、その手を自分の頬にそっと添えた。
「……ね…?」
私は微笑んで唯人君を見た。
「……うん、いる。あったかい。」
「私が?」
「うん、すごいあったかい。落ち着く。」
唯人君はそう言うとニコッとして私にキスをした。
「…!」
ふいに重なった唇が熱を持つ。
「夜深は隙がありすぎ!!」
「…そっ…そんなの、わかんないよ!!意地悪!」
私は顔を真っ赤にして唯人君の腕をグーで一発殴った。