「それより、何で私の名前知ってるの?」
そう。問題はそこだ。
名字は分かっても、下の名前まで知るはずはないんだから。
「ん?これ!」
彼はピラッと持っていた紙を見せた。
「名簿。先生がくれたんだ。名前覚えろって。」
「それで……」
「ね?夜深って呼んでいい?ちゃん付けとかさん付けってあんまりしたくないんだよね。」
「……好きにすれば」
「やった!!俺のことも唯人って呼んでくれていいから!!」
彼はそう言って私に屈託のない笑顔を向けた。
思わず、顔を赤らめてしまった。
そんな顔して笑われたら……
「……唯人…君」
「よし。ごーかくっ!」
「……」
何で、この人はこんなに優しいのだろう。
私なんか
放っておけばいいのに。
唯人君はかっこいいから、一目見て気に入った人もたくさんいるはずだよ。
私なんか……
気にしなくていいのに……