抱き合った私達を月が明るく照らしている。




私は、私を包んでいる彼から離れるなんてできなかった。




私が寂しいとき、唯人君はそばにいてくれた。



私のわがままで、ちょっと気まずくなったときも


唯人君は変わらない態度で接してくれた。




そんな優しい唯人君。



その彼が、今こんなにも弱ってる。



震えている。




きっと、泣いてるの……




「夜深。」



「ん?」



「そっちに行ってもいい?」



「……うん…。いいよ。」




唯人君は私に顔を見せずに、ベランダを飛び越えて私の元へ来た。




やっぱり男の子だ。



ベランダを飛び越えるくらい、へっちゃらなんだ。




「夜深…」



唯人君はまた、私を抱きしめる。




いったい、どうしたのか。





「唯人君。寒いから、中入って?ほら、手、すごい冷たい。」



私は唯人君の右手を取って、自分の左頬に当てた。



私の温かい肌に、唯人君の手の冷たさが染み込んでいく。



私はそうやって唯人君を見つめるのに、唯人君はまだ私の顔を見てくれない。