何で今の唯人君はこんなに弱いのだろう。
この間、私を駅まで迎えに来てくれた彼は、とても強く見えたのに。
昨日も、何ともない、いつもの彼だったのに。
今私を抱きしめている彼は、まだ、産毛しかはえていない雛鳥のように弱く見える。
「夜深。どこにも行かないで…」
「行かないよ。」
「夜の街にも、今日だけは行かないで…」
「うん、行かない。」
私は震える彼を、これでもかって言うくらいに
更に強く抱きしめた。
「ごめん……夜深。うざいよな…ごめん…ごめん…」
「うざいなんて思わないよ。何があったのかわからないけど、大丈夫。大丈夫だから…」
「ごめん……ごめんな…」
ごめんを繰り返す彼は、相変わらず小刻みに震えていた。
顔を見ていないけど、もしかしたら泣いているのかもしれない。
何があったのだろう。
ものすごく気になるけど、聞けない。
こんなに弱った彼に聞くことができないのはもちろんだったけど
聞いちゃいけない気がしたんだ。