「あああっ!!あったまくるッ!!」
思わずレモンティーのパックを握り締めると、ぐしゃっという音と共に見事に形が変形した。
「に、虹那ちゃんどうしたの?」
1人あたふたしながら、机に零れ散ったレモンティーを亜依がせっせとハンカチで拭いていく。
ごめん、亜依……。
あたしがイライラしている原因はーー…
「昨日も楓くん、レイカちゃんと一緒に帰ってたよね……」
そう。あたしがイライラする理由は全て楓に関係することだけ。
昨日、隣のクラスの名前も知らない男の子に呼び出されて、『好きなんだ』って顔を真っ赤にしながら告白された。
告白されるのは実は苦手。
だってあたしは、どんな人に告白されてもそれを受け入れられないから。
『ごめんね。あたし、今誰とも付き合う気ないんだ。気持ちはすっごく嬉しいんだけど』
いつだって答えは一緒。
あたしは……あたしが欲しいのは、たくさんの告白よりもたった一人の『好き』の言葉。
楓の気持ちだけが欲しいんだ。
『そっか、ありがとう』と言い残して走り去った男の子の後姿を、見えなくなるまでずっと見つめていたその時。
『モテモテだねー相変わらず♪』
口笛を吹きながら、茶化すような声が聞こえて思わず振り向いた。
『な、楓!?いつからそこに……!?』
告白現場を見られるなんて、恥ずかしすぎる!!と、1人オロオロしていると。
『んー?最初っから見てたよ?虹那が呼び出された後、コッソリついてきたんだよね』
『な、覗きとかサイテー!!』
今度は顔を真っ赤にしながら、楓の胸をポカポカと叩いた。
すると楓はあたしの両手を掴み、真剣な顔でジッと見つめてきて。
『ななな、何よ!?』
不覚にも、そんな楓に動揺してしまう。