ーーバキッ

思わず力が入りすぎて、シャープペンが真っ二つに折れた。


「まったく、どいつもこいつも……」

男ってヤツは!!


「虹那ちゃん?」

「おっかねー…」


零れ落ちそうなまん丸の瞳を更に丸くしながら、心配そうにあたしを見つめる亜依と。

完全に引き気味で数歩後退りしている楓。

亜依はいいとしても、楓の反応はいただけない。


「ごめんね、亜依。で?何がおかしかったの?」

「え?あっ、虹那ちゃんと楓くんってやっぱり仲良いなぁーと思って。まるで夫婦漫才みたいだったよ?」

「夫婦漫才?」


ーーー…ねぇ亜依。

それってぜんぜん嬉しくないんだけど。

まだ恋人にもなれてないのに、いきなり熟年夫婦みたい。

やっぱり、あたしの勝ち気な性格がダメなのかな……。


「あたし羨ましくて」

「……何が?」

「だってあたし、颯太くんと付き合ってるのにまったく相手してもらえないんだよ?一緒に帰ってももらえないし、休日だって会ってもらえない」

「亜依……」


何て言っていいのか分からないけど、でもあたしは亜依が羨ましかったりもするんだよ?

だって、“付き合ってる”って事実があるから。

誕生日やクリスマス、バレンタイン……記念日には無条件に一緒にいられるでしょう?


あたしと楓は、確かに亜依と颯太とは違って口喧嘩はできるけど……。

でも付き合ってるわけじゃないし、楓には彼女がいるから、一緒に帰ったり休日に会ったりってこともできない。

この関係だけは、この先もきっとずっと変わることはないんだよーー…