「だから、さっきから誰のこと言ってんの?」
どうやらこの男、どこまでもシラをきるつもりらしい。
ーー…なんで隠すのよ。
隠す理由が見当たらないっていうのに。
「……彼女、可哀想。どうせ楓のことだから隠す理由なんて、他の女の子と遊ぶため……とかって不純な動機なんじゃないの!?」
「あーやだやだ」と呟きながら、シッシッと手で楓を追い払う真似をした。
「なっ、なんなんだよお前さっきから!!すっげー感じ悪いぞ」
「感じ悪くてけっこうですから、さっさとどっか行ってくんない?」
「おまっ……」
もう少しで取っ組み合いになりそうな険悪な雰囲気を断ち切ったのは、いつもの叫び声だった。
「虹那ちゃあああんッ!あたし、あたし、颯太くんに拒否られたー!!」
「うわっ」
勢いよくあたしの胸に飛び込んできたのは、親友の亜依。
あたしにはない女の子らしさを持ってて、素直に感情表現ができる、誰からも愛される可愛い子。
好きな人にはつい突っ張っちゃうあたしとは、真逆の性格の持ち主だ。