「バカだなぁ健一。虹那が断る理由なんて1つしかねーだろ?」


……出たな。


背後から聞こえた声に、イライラ感を覚える。


「おー楓じゃん!何?虹那が男作んねー理由、知ってんの?」


いちいちこんなヤツの言うことに反応するなよ、健一!!


心の中で叫ぶ。


『楓』と呼ばれるこの男は、あたしの天敵。


「……!?」


楓はあたしの体に腕を絡ませてきた。


「なっ、ちょっ……離してよ、チカン!!」


いくら足掻いてもビクともしない力強い腕に、心臓が煩く音を立てる。


「おい、チカンはねーだろ?好きな男に向かって」

「なっ!?」


何言ってんだあああ!!と叫ぶつもりが。


「えっ、そうなの!?」


健一があたしの言葉を遮った。


「そうだよ、お前気づかなかったわけ?」

「知らねーよ!!」


あたしを無視して繰り広げられる失言の数々に。


あたしの体は怒りでワナワナと震えて……


「そういうわけだから、虹那はオレ以外……」

「うるさあああいっ!!勝手なこと言ってんなぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


噴火した。