レイカちゃんじゃない?

でもあの時、隠れるようにあたしから離れたよ?

じゃあまさか……


「他の女の子?」

「バーカ。違げーよ」

そう言うと楓は、あたしにデコピンをしてきた。

普通なら怒るところだけど、今のあたしの関心は別のところにあって、それどころじゃない。

「じゃあ、さっきの……誰?」


あたしは楓の彼女でも何でもないし、楓の携帯に誰から電話がかかろうと気にする必要もない。

だけど、気になってたまらない。

レイカちゃんじゃないのに、隠れるように離れて話していた相手がーー…


「ああ。あれはな……」

なんだか気まずそうに目を逸らされた。

「やっぱり、女の子なんだ?」

「だから違うっつーの」

「いいじゃん、別に隠さなくても」


言葉とは裏腹に、涙がまたこみ上げてくる。


「泣くなよ」

「ごめん……」

ごめんねと何度も繰り返し呟くと、楓が優しくあたしを引き寄せ抱きしめた。

「頼むから殴んなよ」


殴るわけないじゃん。

好きな人に抱きしめられるなんて、幸せなことなのに。


ーーー…例えそれが、同情だとしても。


「楓ぇー…」

楓の胸の中はすごく温かくて、なぜだか分からないけど泣きたくなった。

「おい、よけい泣かれたらこうする意味ねーだろ?」

「……こうするから泣きたくなるんだもん」


楓の言動全てが、あたしの感情を揺さぶるんだよ。