「ねーねー、もうすぐパレードの時間だよ?あたし、シンデレラ城の前で見た~い」

ベンチに座っていると、目の前をあたしと同じくらいの年のカップルが通り過ぎた。


「パレードか。もうそんな時間なんだ……」

楓の手を振り切って走り出した時は、まだあんなに明るかったのに……。


あの後しばらく走り続けて、不意に目に留まったベンチに倒れこむように腰を下ろした。

携帯を開くと、楓からメールと不在着信が何件も入っていて。

あたしはそれを確認することなく、亜依にメールを送った。

『やっぱり駄目だった』の一言だけ。


携帯を閉じると、座って俯きながら静かに泣いた。

本当は、楓の背中を押したりなんてしたくなかったよ……。

レイカちゃんを気にしてたとしても、ここにいる間は2人っきりでいたかった。


もう少し、魔法にかかっていたかった。


でもあたしは、自分でその魔法を解いちゃったんだ。

「楓……」

どうしたらいい?

今にも溢れ出しそうなスキの気持ちーー…


ちゃんと伝えて、すっぱりフラれて、自分の気持ちにケジメをつけるべきだった?