「虹那!次はあれ乗ろうぜ、あれ!!」
「ちょ、ちょっと待ってよ楓。あたしもう無理……」
スペースマウンテンに乗ってすっかり酔ってしまったあたしとは対照的に、1人浮ついている楓。
楓はやっぱり、楓みたい。
いつも学校で見ている楓と何も変わらない。
まるで小学生の子供みたいにはしゃいでる。
「なんだよ虹那、もしかして絶叫系ダメ?」
「絶叫系っていうか……乗り物全般的にダメだから」
「えっ、マジ!?」
「……うん」
昔からあたしは乗り物酔いが激しくて。
子供の時、親の車で遠出するにもすぐに酔ってしまって……。
だからあたしは出かけることがあまり好きじゃなかった。
でも楓は明らかにアウトドア派だし。
デートするならきっと、今日みたいに遊園地とかで彼女と楽しく回りたいんだろうなって思う。
それが苦手な時点で、もしかしてあたし、楓の恋愛対象から外れちゃうのかなーー…
「ごめん楓。少し休めば大丈夫だから。次何乗る?」
楓が楽しんでくれれば、あたしはそれで満足だから。
スプラッシュマウンテンでもビッグサンダーマウンテンでも何でも、今日は頑張るよ。
「どこがいいかなー…」
なんて言いながらマップを開くと、突然楓がそれを取り上げた。
「え?楓?」
「そろそろお腹すかねー?何か食べに行こうぜ」
「腹へったー」と言ってお腹に手を当てながらお店を探し始める楓に自然と笑みが零れる。
「虹那?何笑ってんの?」
「……だって。楓、あたしのためにわざと話逸らしたでしょ?」
「えっ、な、何言ってんだよ」
不自然に慌てだす態度が「そうだよ」って言ってるようなもんだよ?
あたしの乗り物酔いを知って、無理をさせないようにしてくれたんでしょ?