楓に手を引っ張られてドキドキしながらも、心の中で亜依のことが気になってたまらない。
「亜依、大丈夫かな……」
颯太と2人っきりになった途端、泣き出さないかな。
やっぱり、2人のとこへ戻ったほうがいいんじゃ……。
そう思った時、突然楓が足を止めた。
「ぶっ」
急に立ち止まるものだから、思いっきり楓の背中に顔をぶつける。
「痛ったー…もう、急に止まらないでよ!」
鼻を擦りながら、楓の背中に向かって言うと、楓が大真面目な顔で振り向く。
「今はあいつらのこと忘れろよ」
「え?」
滅多に見ることのできない楓の真顔に少し戸惑いを覚える。
……楓?
「なんてな。亜依ちゃんのことは颯太に任せとけば大丈夫だから」
「ホントに?」
「ああ。颯太はあれで、亜依ちゃんのことスッゲー大事にしてんだよ」
「……どこが?」
楓は何かを知ってるようだけど、いつも学校で見ている颯太しか知らないあたしにはその根拠がサッパリ分からない。
首を傾げて難しい顔をするあたしに、楓は「ははっ」と笑った。
「とにかく今は2人で楽しもうぜ」
そう言うと楓はあたしの手を離し、恋人繋ぎをしてくれた。
「ほら。これでオレらも今日はカップル♪」
「調子にのんな!!」
楓の肩を軽く叩いて怒って見せたけど、心臓はもう今にも破裂しそうな勢いだった。
ーーー…バカ楓。
これ以上あたしをドキドキさせないでよ。
これ以上ドキドキしたらあたし……死んじゃうよ。