ニカッと笑う楓にドキッとしながらも、“1日限定カップル”という言葉に胸がチクリと痛む。


さっきの『虹那と過ごしたい』って言葉を聞いて、ちょっとだけ甘い期待をしたのに。

その言葉に別に深い意味なんてなかったんだって思い知らされて、ガッカリした。


だけどそんな姿、楓には見せられない。


「分かった。亜依と颯太のためだしね。相手が楓っていうのがちょーっと引っかかるけど、仕方ないから我慢したげる」


これは精一杯のあたしの強がり。


「はっ。言ってろよ。ぜってー1日でお前落としてやっからな」

「ふふん。楽しみにしてる。楓の腕がどんなものか、あー楽しみ~」



ーー…今はこれでいい。

楓とレイカちゃんが付き合ってるわけじゃないって分かって、それだけでも嬉しい。

おまけに、イブに楓と過ごせるんだもん。

ゆっくりゆっくり、楓に近づいていければーー…






「ごめんなさい。あたし……好きな人がいるの」

「えっ、好きな人?」


放課後呼び出された校舎裏で、初めて“好きな人がいる”という理由で告白を断った。


今まで曖昧に断ってきたから、期待を持たせてしまっていたのかもしれない。

だけど、それももう終わり。

あたしの気持ちはもう、楓に真っ直ぐ向かってるから。


いつかぜったいあたしのこと好きだって言わせてみせる。

フラフラしてる楓を、あたしから逸らせないようにしてみせる。

楓にとって、あたししか女の子に見えないくらい夢中にさせてみせる。


いつも強がりばかり言っちゃうあたしだけど。

本当は童話の王子様×お姫様に憧れてるような、普通の女の子。


イブはそんなお姫様みたいに、素直に王子様に甘えたいなーー…