『彼氏がいるから付き合えないって言えばいいのに』
『は?彼氏って誰のこと?』
『決まってんじゃん?オ・レ♪♪』
ーーー…は?
『何言ってんの?』
今のあたしにそんな冗談言うなんて……。
怒りで肩が震えた。
だって楓には、レイカちゃんがいるくせに……っ!!
あたしがこんなに苦しいのは、楓が人のものだから……。
仲良い幸せな2人に波風立てたくなくて、“好き”って言葉にすることもできないのに。
あたしにとって一番残酷な冗談だよ……っ!!
『離してッ!!』
思いっきり楓を突き飛ばして睨みつけた。
『痛ってーな。何度も言うけどお前、冗談なんだからもっそソフトに受け止めろよ』
『そんな冗談言わないでよ!!』
『はあ?何だそれ』
どうしようもなく無神経なこの男を、どうしてあたしは好きになってしまったのか。
本当に男を見る目がないのかもしれない。
だけど……
こんな男でも、あたしは楓以外の人を好きになれないんだから……仕方ない。
『楓ーッ、あーいたいた~!もぉ探したんだよー?早く帰ろうよー』
甘い声を出しながら、楓の腕に両手を絡ませ、満面の笑みで楓を見上げる彼女。
そう、この子が楓の幼馴染で噂の彼女のレイカちゃん。
きっと男が守ってあげたくなるような、可愛い女の子の代表的存在。
ーーー…あたしとは違う。