いつもと変わらないある日、突然の吐き気が襲った。
「お昼のお弁当傷んでたのかなぁ」
胃腸薬を飲みそのまま仕事を続けた。次の日も突然吐き気はやってきた。
「うっ…気持ち悪い…」
その日から体がオレンジジュースしか受け付けなくなっていた。
「まさか…妊娠?そんなはずはないか…毎回きちんと避妊してるしなぁ」
日曜日、それでも何となく気になってたくちんに相談する事にした。
「ねぇ、たくちん…あのね…」
「どうした?」
「まさかとは思うけど妊娠したかもしれない?」
「えっ!?避妊はきちんとしてるからそれはないんじゃない?でも一応調べてみよっか」
薬局で妊娠検査薬を買い公園のトイレに駆け込んだ。検査薬には陽性反応が出ていた。2人して呆然とした。全く心当たりがなかったからだ。
「一度産婦人科へ行ってきちんと調べてもらおう」
たくちんの言葉にうなずいてその足で産婦人科へと向かった。検査の結果…
「おめでとうございます。妊娠していらっしゃいます」
看護婦の言葉が信じられなかった。先生と話す為診察室へ2人で入っていった。
「先生、きちんと避妊しているんですが妊娠する事ってあるんですか?」
たくちんが尋ねると先生はこう言った。
「ごくまれなケースで妊娠する場合もあります。コンドームだけでは100%避妊が出来るとは言えません」

2人は病院を後にした…
私のお腹のなかにはたくちんの子供が入ってるんだ…
複雑な気持ちだったが嬉しかった。2人の意見は一致していた。
「産もう!」
嬉しかった。会社への報告はもう少し先延ばしする事にした。その日の夜たくちんからメールが届いた。
【瀬菜の子供だからきっと可愛いよ。そうだ!名前は男の子だったら飛鳥、女の子だったら姫香、オカマだったらキャサリンだ】
ふふふ…気が早いなぁ〜。私はお腹をさすった。一週間後だった。家の階段から下まで滑り落ちてしまった。
「まさか…!」
私は慌てて階段から滑り落ちた痛みも忘れ産婦人科へと駆け込んだ。
流産だった…
たった一週間の命しか上げられなかったのだ。涙が次から次へとこぼれ落ちた。たくちんに泣きながら電話した。すぐ近くの公園まで来てくれた。私は全てのいきさつを話した。たくちんは黙ったままぎゅっと抱きしめてくれた。たくちんの目にも涙が溜まっていた。6月の始めだった。
私たちはお寺へ行き一週間しか生きられなかった我が子にお経をあげてもらった。それから毎月命日にはお参りを欠かさず続けた。
「今度生まれて来る時はもう一度私の赤ちゃんとして産まれてきてね」
私とたくちんの仲は一気に縮まりもう何も怖いものはなかった。一緒に手を繋いで歩いている時も周りから振り返り見られたり指差されたりする事もあるけれど私は平気!付き合い初めて五年が経過…。私たちの仲は変わらない。街角の手相占い師に2人の行方を占って貰った。結果は最悪だった。でも関係ないよね、たくちん。だって私たち赤いロープで結ばれているもの。たくちんのくちぐせ…それは…
「俺のものは瀬菜のもの。瀬菜のものは瀬菜のもの」
私のものはたくちんのものだよ。近い将来一緒になる約束もしちゃった。2人の秘密がバレる時だね。みんなどんな顔するのかなぁ…楽しみ。会社で逢ってプライベートで逢って毎日逢える幸せ。瀬菜はこれからもずーっとたくちんの事愛してるよ。お料理、ゴルフ…頑張って勉強するからね。子供な私と大人なたくちん。たくちんの言う
「いつまでも天真爛漫な瀬菜でいてね」
それってこのままでいいって事だよね?こんな私を愛してくれてありがとう。
いつまでも私の上司はダーリンです。大好きダーリン。

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