「なあ、部活はいるか決めた?」



まだ、中学生気分が抜けないのか
ザワザワと騒がしい教室で、杏子が話しかけてきた。


「えー?部活なあ…」



杏子は中学生のとき、美術部に入っていた。
だから、私はまた高校でも美術部に入るのだろう
そう思っていたのに、杏子はケロリとした表情で



「え?あたし美術部にはいらないよ?」
といったのだ。あたしは、え?と聞き返すと



「吹奏楽部にはいるんだよねッ」


と満面の笑みで答えた杏子。
その時点で嫌な予感はしていた。




「凛音も入るでしょ!?」


案の定、嫌な予感は的中。勧誘されました。





何だかんだで、流されて部活動見学に行った私。
杏子は何がやりたいのかはっきりと決まっていたらしく
「パーカッションやりたいですっ」と言いながら
嬉々として駆けていった。



「え、あ…!?杏子!?!」


呆然としていた私もそこでやっと我に帰る。
どうしょう…、やりたい楽器とかないのに…!



そう思って頭の中がグルグルになっていると
一人の先輩(?)が近寄ってきた。



「部活動を見学したい子?」




ニッコリ、と笑いながら小さく首を傾げて尋ねてきた。
よく見るとネームプレートを下げていたので
名前は直に分った。



(宮原 鈴…先輩?…コントラバス、か)



名前と一緒に楽器まで書いてくれているのは
物凄いありがたかった。


「あ、はあ…まあ、そうです」

なんて答えたらいいのか分らず
随分曖昧な答えになってしまった。
苦笑いを浮かべながら戸惑っていると
鈴先輩が、「何やりたいとかあるの?」
と聞いていた。





「いえ、特にはないです…」



…正直、高校に入ってからブラスをする気はなかった。