瞬間、



「泣いてんじゃねぇよ。」



ふわっと甘い香りが鼻を掠めたと思ったら、



あたしの上に先生が覆い被さってて…



「キスぐらいで泣いてんじゃねぇよ。初めてでもあるまいし。」



ギュッと、先生の香りに包まれてて…



そうだよ。



先生の言うとおり、



キスは…



三村くんとキスするのは、



初めてじゃ…ない…よ。



でも…



「“好きだった人”にキスされても、全然嬉しくないよ。」



「………」



「先生と…“好きな人”と、こうしてる方が、100倍…ううん、1000倍、ドキドキする…よ。」



あたしは、抱きしめてくれる先生の肩口に顔を埋めると、



ギュッとシャツの袖を掴んだ。