当日私は35歳、会社員、木村 英雄

妻、木村 マキ31歳、専業主婦

結婚して7年目


当時の私たちはなかなか子供できないなと思いつつも、大して気にはしていなかった。


夫婦仲も良好であったし、二人の生活を楽しんでいた。


もしあのキッカケが無かったら今でも不妊とは思って無かったかかも……


それは私が妻の実家から一人バイクで帰ってきた時に起きた。
私は妻を実家に残し、一人ドライブ気分で約2時間のバイクを楽しんだ。


シートやマフラーを変え、サスペンションも変えているので座り心地は悪い。

帰って来た時にはお尻が痛くなっていた。

家に入るなり私はトイレに駆け込んで小便をした。

「うわ!!」

私は思わず叫んでいた。


小便に血が混じっていたのである。


痛みがあった訳ではないし、大量でもなかったのでバイクで擦れたのかな?とあまり気にしていなかった。
一応妻に電話をして、血が出たことは伝えておかないとマズイかなと思い、電話した。

妻は「そんなバイク乗ってるからだよ~まぁ念の為に明日病院に行ってきな」と軽く答えた。


翌日、会社の上司に話をすると案の定バカにされた。

「変な性病とかじゃないのか?(笑)」

「違うよ」


私も笑いながら話をして、昼休みに泌尿器科に行くことにした。
ビルの7階に小さな泌尿器科があった。

綺麗なたたずまいだが、誰も患者は居なかった。


まあ少し恥ずかしいから変えって好都合と思い保険証をだした。

診察の為の紙を貰い記入していく。

バイクに乗ってたら小便に血がでたと…



暫くすると

「木村さ~ん」と看護師さんに呼ばれ診察室へ


診察をすると先生は
「あ~大したことないよ。どっか擦って血がでただけだね」


ホッとした。

ホントに変な性病かと少し心配していたし


「ありがとうございました。」と診察室を出ようと席を立った時、先生は一言いった。
「木村さん、これみるとお子さんはいないんだね?」

診察の為に書いた用紙を見ながら呟いた。

「はい」

「結婚して何年?」

「え~と…今年で7年かな?」

「そうか~…一応ね…結婚して2年しても子供が出来ない事を不妊って言うんだ」

「はぁ」
正直私は何いってるんだこの医者はって感じにしか思わなかった。


「一度キチンと診てもらった方がいいよ」

「奥さんにそんな事言えないだろうから旦那さんの精子だけみてみてもいいしね」


「はぁ」私は気のない返事をしたが、

まぁ見るだけみてもいいかなと思い

「ここでも出来るんですか?」と聞いてみた。

「もちろんできますよ、ただ出してから20分くらいまでには持ってきてもらわないといけないよ」

私は一様精子を入れる容器を貰い病院をでた。



妻には「なんでもなかったよ。擦れただけだって」と精子検査の事は言わずにおいた。


私は、調べてもらうくらいはしてもらおうと考えていた。


確か精子が弱いとか、少ないって聞いた事あるし


俺が問題なければそれはそれでいいしと…


泌尿器科に電話をして、明日の昼に持っていくと伝えた。