「 別にそういう訳じゃ… 」
「 本当 ?僕は馬鹿だからそ
う捉えるよ ?君がそう言う
ならね 」
時掛は非常に大儀そうに眉
間に皺を刻むと鈴守から目
をそらした 。
鈴守はそのままうつ向く 。
「 鈴 」
時掛にそうやって呼んで貰
うのが 、素直に好きだった
。しかしそれは 、今の様な
きつい語調ではなく 、風に
乗せた様な優しさが 、だ 。
「 傷付けたんだろ 。──謝
ろうか 」
「 そんなことが言いたいん
じゃなくて…そうだな…少
し待って貰える ? 」
鈴守の言葉のあと 、時掛は
窓枠に座って制服の小さな
胸ポケットから剃刀を取り
出すと 、冷たさを確かめる
様に首筋に当てた 。
鈴守が顔を上げる 。
「 …ときかけ ? 」
幼くて 、繊細な視線 。
そうだそれが好きなんだ 。
目を瞑った瞬間 、剃刀は手
から零れ落ちる 。鈴守がや
ったことだと気付くのは少
し後 。
鈴守の不思議そうな目と時
掛の目が合う 。
「 ── ?僕… 」
「 今のはお前が操作したん
だろう ?無意識に 」