「 束縛… 」
鈴守の小さな呟き 。一秒後
には時掛が振り向くだろう
(彼は本当に面倒臭い奴な
のだが) 。それが判ってそ
れを口にしたのでも無いし
、意味は無かったのかも知
れない 。
「 どうした ? 」
嗚呼 、阿呆臭い 。
そして馬鹿らしい 。
(判り易すぎるんだ)
時掛は明らかに鈴守に話し
かけるのを躊躇っていた 。
理由なんて 、今更思い出し
たくもないのだけれど 。
「 ううん…時掛は優しいね
。有難う 」
時掛はそれには直接的に答
えず曖昧な頷きと共に意識
ごと窓の外にやってしまう
。
今 、鈴守と時掛の二人は誰
も居ない図書準備室に鍵を
して授業を自主的に受けて
いなかった(要するにサボ
リなのだが) 。
別にどちらかがどちらかを
誘ったのでもなく 、個々に
動いていたら此処に行き着
いてそれが偶々一致しただ
けなのだ 。
「 ねぇ時掛 、君は僕に要ら
ぬ遠慮を掛けてくれている
様だけれど 」
微笑んできたかと思えば睨
みつけてくる 。そうやって
此方側に感情を読ませない
ようにしているんだろう 。