「 え… 」
仁花が二人の後ろで戸惑っ
ていると 、教師──浅川は
鈴守の肘を乱暴に掴んで引
っ張った 。
バランスを崩した鈴守が浅
川の体に倒れこむ時 、教師
は何かを囁く 。
「 ──…鈴 ! 」
浅川は鈴守を受け留めよう
だなんてしない 。
投げ捨てるように鈴守は横
に飛ばされる 。
それを 、伸ばされた時掛の
左腕が支えた 。
「 あ…有難… 」
「 え 、いや…大丈夫か ? 」
──何だろう 。
今 、二人の間に走った変な
一瞬 。空気が硝子板みたい
に 、二人を閉じ込めたよう
な感じ 。
でも仁花は気付かなかった
のだ 。
「 お前か 、ラストシンデレ
ラは 」
二人は 、仁花から離れてし
まっていたということに 。
「 へ…っ ?あ 、あのっ 」
仁花の顔 、すぐ横に置かれ
た 手 。
浅川は 、後退る仁花を図書
室の大きな窓のある壁へと
追い込んだ 。
「 ふぅん… ? 」
教師は 、仁花を眺めて満足
そうに微笑む 。
「 時掛 、…仁花が 」
時掛の小さな舌打ちが聞こ
えた 。