「 それって… 」

 仁花が言おうとしたことを
  、鈴守は察したように 、綺
 麗な長い指を自分の唇にそ
 っと当てた 。

 「 うん 。…──まぁ 、正直
 な所主催者さえ見付けられ
 れば 、此方のものだよ 。 」

 そういえば 、鈴守は電車の
 運転手の心を操って仁花を
 助けてくれたのだ 。



 …でもそれは 。

 「 …私 、君のこと信じても
 いいの ? 」

 仁花はポツリとそう言った
  。

 ──少し不安になった 。
 仁花も 、鈴守に心を操作さ
 れているのではないか 、と
  。周りの人々全て操られて
 いるのではないか 、と 。

 鈴守は 、短い仁花の言葉に
 籠められた不安を読み取っ
 たようにうつ向く 。

 信じて 、なんて言ったって
  、今仁花には信じてあげら
 れるような自信がない 。



 「 仁… 」

 「 此奴だって人の心操作す
 るのには精神使うんだ 。無
 駄撃ちはしないんだろ 」

 無駄撃ち 、と言われたこと
 にはムカついたけれど 。

 苦笑する鈴守と 、

 悪気も無さそうな時掛と 。


 どう見ても悪い人には見え
 なかった 。