「 もう 。そろそろ帰らない
 とフェンが心配してるよ ?
 僕もかなり小言言われちゃ
 った 」

 「 …魔術師の身分で偉そう
 だよな 、彼奴は 」

 長い睫毛の下に玻璃の玉の
 ような綺麗な瞳 。
 落ち着いた黒のようで冷た
 い蒼のような髪がほんの少
 しなびく 。

 「 茉野仁花…だっけ ? 」

 「 え 、あっ 、はい ! 」

 「 名前知ってるなら良かっ
 た…仁花はラストシンデレ
 ラだよ 。フェンが見付けて
 きたんだ 」

 「 ふーん… 」

 パラ 。

 また時掛の手がページを捲
 る 。表紙を見た感じでは 、
 天体関連の書のようだった
  。

 「 どう ?読書は進んでるの
  ? 」

 「 まあまあ 。一応ピーター
 パンも原文で読んではみた
 んだが 、何の発見も無かっ
 た 。 」

 「 内容は同じだもんね 」

 仁花が表紙を見つめたまま
 ぽけっとしていると 、鈴守
 が静かに笑う 。

 「 どうしたの… 、面白い顔
 して 。あ 、時掛はね 、天文
 部の部長なんだよ 」

 「 天文部なんてあるの ? 」

 「 それ軽く傷付くから 」