ドサ 、とフェンネルが崩れ
 落ちる 。

 「 フェン ! 」


 鈴守が叫んだのを聞いて 、
 仁花はやっと目の前のフェ
 ンネルに目を移した 。

 「 大丈夫 。ちょっと切った
 だけ 」

 「 本、当…に… ? 」

 仁花を見たフェンネルが 、
 ぎょっとしたような顔をす
 る 。

 「 何で泣く 、んですか… 」

 「 え…──── ? 」



 ──泣く ? 私が ?

 でも本当に 、確かに仁花は
 涙を流していた 。

 「 だっ 、て…フェンネルさ
 ん死んじゃうかと思った…
  ! 」

 硝子細工が 、綺麗なまま崩
 れていく様を見ているよう
 だった 。

 フェンネルは苦笑して 、仁
 花の目尻を親指で撫でる 。


 「 …もう さん なんて付け
 ないで良いですよ 、 」


 「 フェン 、ネル… ? 」

 「 そう 。僕は君の魔術師だ。


 僕らのラストシンデレラ 」






 そして 、フェンネルの唇が
 仁花の頬に優しく触れた 。