ふと質問された。
確かに住む事を考えて無かった。

「空き部屋なんかあるのか?しかも、良いのか?」
「空きまくりなんだって。しかも家賃タダなんだよォ!」

明らか怪しいアパートだな…と思った。
しかし外観は普通のマンションよりもおかしいくらい綺麗だった。

「アカシア・アパート?」
「知らないはずはないと思うヨ。アラスカ・コーポレーションの家だからネ」

アラスカ・コーポレーションは大手不動産会社のことで、俺の住んでいたスティンガーロイヤル・マンションズと言うマンションもこの会社だからだ。
言いかえると、全世界の家はこの会社で造られていると言っても過言ではない超巨大会社だったからだ。

「大家さァーん。新入居者、連れて来たよォー」
「あいよー」

大家と言うからもっと、高齢の方だと思ったが、旅館の女将の様な風貌のまあまあ若い女性だった。

「遠藤…廉人…様ですね、ハイハイ。もう入居者さんの準備は出来ていたトコロなんだよ。…あ、ゴメンなさい。ちょっと待ってて」
「この大家さん坂田静夜さんはBar・JULEPのバーテンダーなんだぜィ」
「バーか、じゃあ、カクテル飲んでいいか?」
「アカシア住人なら全ての飲み物タダ!」

「ええと、静夜さん、ダイキリもらえますか?」
「もちろん!」

Bar・JULEPにシェイカーの音が響く。
店内に流されているクラシックの音楽。

「どうぞ、ダイキリだよ」
「ありがとうございます」