PM.23:55。

「じゃ、行ってくる。しっかりな」

そう言うと純樺の頭に手を乗せた。
最後まで悲しそうな顔をし、見送ってくれた。

「レントさん…。生きて帰ってきて。お願い」
「ああ」

一歩一歩、飛行機に乗り込んだ。
俺達の世界に足を置くこともこれが最後になるかもしれないから。

機内には終々行きの客で大勢いた。
なんでこんな危ない場所に行くんだろう、こんな大勢の人が。
自分の席の隣の人が話しかけてきた。

「あなたも、終々に行くの?」
「はい…。仕事で」

その女性、高梨絵茉(たかなしえま)は風貌から医師だと分かった。
しかし、一人称に問題があった。

「高梨は終々が好きなんだァ。無法地帯何か言われてっけど、どこがって感じィ。はずれにはきれいな海とかいっぱいあんだよねェ」
「は、はぁ…で、なんで終々なんかに行くんですか?旅行…?」
「あー。仕事だぜィ。医薬品の研究とか、開発とかのォ」

それを聞いた瞬間、製薬会社・カミカゼが出てきた。
なんも関係ない筈なのに、医薬品と言う言葉とリンクしていた。

「あの…。失礼だけど、勤めてるところって…」
「MANT A NATH(マント・ア・ナーズ)製薬だけど?」

知らない会社だな…。
しかし心の奥底ではカミカゼに勤めていたら、すぐに全ての事を曝け出してもらえたのに。

「(まもなく、終々に到着します。最後までシートベルトを着けたままお座り下さい)」


「あ。そろそろだネェ。ありがとう、楽しかったヨ。また会えたらいいねェ」
「ええ。また会える日まで」

そう言い、機内から降り立った。