「それで何の用?」
「あの…。出張、今夜なんですか…?終々の便23:55発の…」

純樺は困惑して怯えているような顔つきで言った。

終々(しゅしゅ)。
武装国家と言われるだけあって国民全員が武器を持っている。
しかし、それも『終わりの終わり』を告げた。
それはファシズムからパシフィズムへと移行。
しかし大きな移行に時間がかかり過ぎ、アナーキー(即ち無政府状態)の間、巨大な裏国家・始再(しさ)計画の始まり、表向きは平和主義の国として世界の援助などもしている製薬会社もある。
その製薬会社・カミカゼ。裏では非細菌撲滅アルコール・Cubeとバイオハザード用新型ウイルス・CONTROLLERを混ぜ、終々全国民を抹殺させるよう、どこからともなくこれを撒く『VIRUS-COCKTAIL project』を遂行。
終々は瞬く間に人の姿がなくなり、菌が蔓延したほんとうの無法地帯と化した。

そこへ俺が行かなければならない。
全ては、『全て』の為に。

この終々の情報も、同僚が命をかけ、提供してくれた情報だ。
その同僚は、俺たちの世界に戻ってからCONTROLLERが発症、その一週間後、末期症状が(アルコール中毒ににたようなもの)現れ、亡くなった。命をかけ、終々の実態を全世界に流そうとした同僚の為にも、俺は行かなくてはならない。

「あの…」
「心配するなって。俺は確かに死ぬかもしれない。けど、まだ死ぬとは限らない。無き同僚のためにも、俺は必ず、生きて帰ってくるよ」

純樺は泣き崩れ、俺は抱くようにして純樺を慰めた。
ごめん、本当に。
その言葉が自分の心に響いて、それとともに心臓の鼓動も早くなった。