それはほんの数秒のことだった。



桐會が振り返ってみると少女が肩で息をしていた。



どうやら話をしながら走っていたのがきつかったらしい。



「大丈夫ですか、お嬢様?」



桐會はハンカチを差し出しながら問いかける。



さすが木樹家に仕える者である。重い荷物を持っているにもかかわらず、息一つ乱していない。



「…はぁ…はぁ…私は大丈夫です………やっぱり凄いですね桐會さんは…あれだけ走って息一つ乱さないなんて…」



少女は深呼吸をして、息を整えてからぽつりと呟く。