【詩集】ロンリーキャッチボール




ひとりでキャッチボールなんて
出来やしないよ







ステレオから流れだす音
時計の針が進む音
それすら
独りを告げる微かな脅威



流れる血は熱を帯びて
零れる涙は命を唄う


あたたかい自分
つめたくなったあの子

でもあたたかかった
そのことを知ってるから
どうしようもなく怖くなる




ねぇ 今この瞬間
君はあたたかいよね
ねぇ お願い
君までサヨナラしないで

ねぇ 明日この時間
私はあたたかいのかな
ねぇ お願い
私まだ離れたくないよ





確かに皆が居た今日を
終えるのが怖い

誰かが居ないかもしれない明日
そんなの、もういらない










アイツがいってから
妙に恐がりになった気がする。



もう誰かと
はなれたくないよ







奇跡のチカラ
手のひらに乗せて叫んだ

軌跡のカケラ
天高く掲げて祈ったよ


今日も痛い程に優しく
僕らを包む空

ねぇ、お願い
もう一度僕らに確率を頂戴
夕日の中の1%を返して



まるで流れ星が当たるくらい
まわる世界が終わるくらい

世界に溢れる百分率を
今日ほど憎んだ日は
もう きっと無い


空が墜ちてくるまで
君を探すよ








どうしてお前じゃなきゃ
駄目だったんだ


どうして
どうして
どうして







砂のお城を作ろう

螺旋階段の先に大きな門
時計塔 バルコニー
中庭だってあるんだよ


水で固めた土をかき集める
城が崩れてしまわないように

小さな手が礎に力を込める
城が朽ちてしまわないように


夕焼けの浜辺 建設中の砂の城
そっとドア叩いた訪問者
優しく滲んで消えた

どうしてくずれるの?
泣いた僕
君は答えずに城を築く
指先が震えてたね
気付いてたよ

漂う感情 確かな温度

波が攫うのを僕らは知ってる
城がいつか朽ちるのも


それでも

僕が居て 君が居た
誰かが居たいと願ってた
広い世界に城を作ろう

僕ら 何度も作ってきた
消えない黄金の城

繋がってた 確かに在った
晴れた霧の中にいくつもの光


つめたい城が
あたたかかった









失くなることを怖れながら
また築いていくことに気付いた







優しい温度が交わって
明日を指差した
見失う未来なんて
生憎持ち合わせちゃいないよ

僕ら つながって
明日へ踏み出した
忘れ去りたい過去なんて
一つも存在しないよ


今までを生きた証明
これからの道標


つながった手の
ぬくもりで命を知ったんだ

確かめたそれぞれの存在を
そっと抱き締めて朝を待つよ

僕らは今日を生きていて
君と一緒に今を生きてる



さて
進もうか もう一歩
秋色の空に届けメッセージ







よし、
今日も頑張ってくるね