いつの間にか
ロビーにいた人達はいなくなっていて
今は潤と2人きり
大きな窓から
西日が射し込んできた
谷君の追試
そろそろ終わる頃かな?
「ところでさ」
潤がわたしの隣に戻って
ベンチに浅く座り
体を背もたれに預けながら言う
「ハルちゃんって、なんで谷と付き合うことにしたの?
まさか前から好きだったなんてことはないよな」
“まさか”って…
谷君が聞いたら怒るよ?
まぁ
その通りなんだけど
でも
そういえばわたし
なんでOKしたんだっけ
あ…
「かわいい笑顔だったから…」
そうだ
谷君があの時
笑いかけてくれたから
あの笑顔に
わたし
惹かれたんだ…
「怖い人って聞いてたけど、ほんとはそうじゃない気がしたんだ。
それで、谷君のこと、もっと知りたくなって…
友達からお願いしますって言ったの」
わたしは潤に話していながら
自分の心の中を整理するかのように
記憶をたどっていた
一方
潤はどこかつまらなそうに
「…ふぅん」
一言
つぶやいただけだった