母親から愛されていないのかもしれないと

思ったことはあるけれど

別にそういうわけではないのだと

十を越えた頃には理解していた



愛されていないことと一人ぼっちは

イコールじゃないし

いつも一緒にいることと愛されていることも

イコールじゃない



母親がいつまでも

水商売を続けていた一番の理由は

たぶん仕事が好きだったからだろうけれど



そうやって稼いだ金で

あたしを育ててくれたのも事実



一緒に過ごすことは少なくても

親としての最低限の役割はこなし

文句も愚痴も言わずにやってのける母親を

むしろ誇らしく思った



何より

どこの母親より綺麗に着飾って

さっそうと夜の街に出て行く彼女は

女として最高に魅力的だった



だからあたしは

親を恨んだことはない



“不良”と呼ばれるようになったのは

悲しい家庭環境のためなんかじゃなく

他でもないあたし自身の結果だ