そのときのわたしは
余裕なんてあるはずもなく
自分の恋人が
他の人を愛おしそうに見つめるのを
目撃してしまった衝撃も悲しみも
恋人が好きだと言ってくれるのを
信じることができなかった
自分への苛立ちも辛さも
わたしは
わかろうともしなかった
谷君がどれだけ悲しみ
悩み
ひとりではいられなかった心細さを抱えて
逃げてしまったことを
どれほど悔やんだか
そんなことを
考える余裕はなかった
ただわたしは
自分の悲しみに閉じこもって
自分を守ることで
精一杯だった
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…