耳鳴りの向こうで

HR開始のチャイムが鳴った



ぼんやりと顔を上げると

いつの間にかみんな席についていて



わたしも

先生が来る前に

席に着かなくちゃ



ガタッ…



足を動かそうとすると

よろめいて

近くの机に手をついてしまった




「…大丈夫?」



―――え?



優しい声だった



このクラスの中で

わたしに優しい言葉をかけてくれる人が

いるの?



顔を上げると

手をついた机は

相沢くんの席だった



ほとんど話したことはないけど

野球部エースの相沢くんは

有名な人だった



小柄で細身の外見からは想像もつかないけれど

すごく期待されている一流選手だと聞いたことがある