ふと

谷君が足を止めた



「谷君?」



谷君は自転車のスタンドを立てて



次の瞬間






ふわ…



わたしの体を包んだ



「…りがとね」



聞き取れないくらいの

小さな声だったけど



でもちゃんと聞こえた



谷君の『ありがとう』



それはきっと



谷君の

孤独だった心の声



きっと

ずっと

心の中で

誰かを呼んでたんだよね






わたしはそっと



谷君の背中に腕を回した



すると



谷君の腕に力がこもり

ぎゅっと抱きしめてくれた



谷君

わたしがいるよ



これからはずっと



わたしがいるからね