谷君の横顔には

今まで見たことのない影があった



お母さんを思い出してる?



表情は優しいけど

瞳は悲しい色



「今もお父さんとは…?」



「ずーっと変わらない。

最近はぶつかることはなくなったけど、逆にお互いシカト。

でもいつか殴ってやるんだって決めてる」



もしかすると

谷君がケンカをしてきた理由をたどっていったら

本当はお父さんへの憎しみなんかじゃなくて



お父さんへの

言葉にできない願いに

たどり着くんじゃないかな…



わたしはなぜかその時

そんなふうに思ったんだ



お母さんを愛し続けてほしかった

自分を見てほしかった



そんな

1人の男の子としての

純粋な願いを

伝えたかったんじゃないかな…