「最後に乗った観覧車からは、夜景がとっても綺麗に見えて……頂上にきたときに陽くんが、陽くんが……」
 もうとっくに枯れたと思った涙が奥から溢れて眼球を覆う。あっという間に視界が潤んで弁当の中身が分からなくなった。
 きっといま、芹香が困っている。見えないけれどそれくらいは分かる。中学時代から、なにかあるたびにあたしは芹香に泣きついてきた。
 どうやってもこの起伏の激しい性格は落ち着く気配を見せないのだ。そう、これはもう仕方がない。
「マナミが好きだよ、愛してるよ、付き合おうよって言ったのおおー」
 とうとう情けない声をあげてあたしは泣き出した。はらはらと涙が頬を伝って、ぼやけていた視界がクリアになる。やはり芹香は困ったように笑っていた。