今更やっぱりやめたいなんて言ったら、彼女は今度こそ声を上げて笑うだろう。想像するだけで悔しさが込み上げる光景だが、名前も知らない女にノコノコついて行く頭の悪さに比べたら、何倍もマシというものだ。 断らなきゃ。胸に手をあて、意を決して振り向いた。
「あのっ……」
「後ろついてきて」
 身仕度を済ませた彼女は、あたしにひとつ目をやると迷いもせず歩き出した。どこか威圧感のある背中につい萎縮する。断るタイミングを失ってしまった。