確かに帰りたくないとは言った。けれどそれが、数時間前に初めて会ったひとの家に上がり込む理由になんかならない。ましてやたったいま一言二言話しただけの、素性の分からない女だ。
 でも、だけど……いまのあたしに他に行くところなんてある?
 あたしが返答に詰まっていると、今度は分かりやすく小馬鹿にしたような笑い方をされた。
「まあ別に来ないならそれでいいけど。私の迷惑にならないところに移動するか、おとなしくママのところに帰りなさいよ」
 細かな刺を感じる言い方だ。子供扱いを隠そうともしないその言葉に、頭に血がのぼるのを感じる。