どれくらいそうしていたのか分からない。途中で何度か眠りに落ちた気もしたし、ただ物思いに耽っていただけかもしれない。とにかく、夢か現か判別のつかない曖昧な意識のなかにあたしはいた。
「ちょっと、」
 誰かがそばで声を上げる。隣に立っていたカップルが会話でも始めたのだと思った。膝を包むように回した腕で目元を擦る。
 泣き疲れ、体がだるい。
 幾度となく繰り返したように、また意識を自分の管轄外に追いやろうとした。
「ちょっとあんたってば。帰んないの?」
 今度ははっきりと、その声はあたしの耳まで届いた。