昼間のように強引に引き留められるかと思ったが、違った。雪平は真面目な顔をして、なにか考えるように頭を掻いていた。
「ごめんな」
「え?」
「無理に連れ出したりして」
 思いがけない言葉になにも言えなくなる。無言で見つめるあたしの代わりに、雪平が続けてくれた。
「少しでも他のことに集中してた方が、ひたすら彼氏のこと考えてるより楽なんじゃないかなって思ってさ」
 照れ臭そうに、半分申し訳なさそうに、雪平が視線を外す。
 あたしはなんだか感動してしまって、返すべき言葉が分からなくなる。なんだ、つまり、雪平は雪平なりに心配してくれていたのか。