その日の夜、達郎は夕飯を済ませると自室に入り、パソコンの電源を入れた。

キーを叩いて開いたのはS高校のホームページ。

S高校は以前からパソコン教育に力を入れており、早い時期からHPを開設していた。

達郎はマウスを操作してHPにある生徒専用のチャットルームに向かった。

達郎は兄の依頼を受けた時点から、聞き込みの重要性を感じていた。

しかし一生徒に過ぎない達郎が事件についてあれこれ訊き回るのは不自然だし、上手く立ち回るにも限界がある。

相手も面と向かっては、話づらいこともあるだろう。

そこで目をつけたのが、HPのチャットルームだった。

匿名性のあるネット上であれば、個人でも情報が集めやすいのではと考えたのである。

もっとも、得た物と言えば根も葉もない噂話ばかりだった。

4人組に対する妬みや中傷ともとれる発言も多かったが、エリートに対する反発以上のものはなく、彼らに対する個人的な恨みは見えなかった。