しかし自らが口にしたジュースに、不審な点があったのは警察から知らされているだろう。

馬場だけではない。他の3人も同じはずだ。

なのに彼らは4人で談笑している。

ひとつ間違えば、命に関わる事態だったというのに。

エリートの余裕が為せる業だろうかと達郎は思った。

それとも笑っているのはうわべだけで、心の中は疑心暗鬼になっているのだろうか。

もうひとつ、達郎の興味をひくものがあった。

それは5人目の存在だった。

天堂の横に、ひとりの女性がかしづくようにして座っていた。

黒く長いストレートヘアに人形を思わせる華奢な身体つき。

整った顔だちとあいまって、良家の子女を思わせる。

彼女の名は佐伯由美。

当校の2年生である。

父は英文学の教授ということだったが、世間一般では社会心理学者の母親の方が有名だった。

コメンテーターとして、メディアに露出する機会が多いからである。