「‥‥っ」


ダッ


「まっ…!アイリ!」



走り去ろうとしたわたしの腕を泰介の大きな手がつかむ。

あったかいこの手も、
もうわたしのものじゃない。


‥‥だって、
わたしを浦山先輩の名前と
間違って呼んだ。



「…ごめん」



わたしが振り向くと、ハッとした顔をした泰介がいた。

その目はわたしじゃなくて、口もとを覆いながら、廊下をうつしてた。


「‥‥はなして‥」


そんな顔、しないで‥‥っ



パシッ



「………」


わたしは泰介に引き止められることなく教室まで走った。